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違和感とサブリミナル

2008年4月24日 Creatorsトーク

調和がとれていると美しい。余計なつっこみをする必要がない。
しかしWebデザインの場合は、クリックするなりカーソルを動かして、アクションを起こしてもらわないと成立しないものです。ぼ〜と観られてるだけじゃダメなんですよね。
そこで視線誘導ってことを考えるわけですが、目が「応募はここから」ボタンなどに行くようにするには、調和の中に少しの違和感を持たせることもあります。目立つ色とか、大きさとか。

違和感によるメッセージ伝達手法といえば、「サブリミナル」が有名ですよね。
そもそものはじまりは1950年代の終わり、ニュージャージー州の映画館で、「ピクニック」という劇映画のフィルムに「コーラを飲もう」というメッセージを入れた1フレームを5分ごとに挿入してみたら、売店のコーラの売上があがったとされる有名な実験です。観客は、1/24秒のメッセージを気づかないながら、無意識にある行動に駆り立てられたというものですが、その実験の真相は疑問視され現在では都市伝説化しています。つまりコーラの売上があがったのは、本当に1フレーム映像の結果なのか、たんに暑い日だったのか、実験として成立する条件があいまいな上、論文も存在しないからです。

とはいっても、日本のテレビ局では、意図的に1フレームの映像を挟み込むサブリミナルな効果を自主規制しています。アニメ「うる星やつら」では、スタッフのお遊びとしてされていたことですが、その後社会的に洗脳という手法に敏感になってしまったことから、効果云々の前に抹殺されてしまいました。

実験的に1/24秒の映像をヒトは認識できないことになっていますが、映像を見慣れたヒトなら認識できますよ。映画「エクソシスト」で悪魔の顔が1フレームだけ挿入されたのに気づいた人は多かったようだし、1秒30フレームのテレビ映像やそれ以上のフレームレートで再生される動きの速いゲームなどで、ヒトの目が追いついてきているのかもしれません。

映像のサブリミナル効果は瞬間の話ですが、印刷物でも存在します。
そもそも広告そのものが、ヒトが自分で選択していると思っているものが、実は広告によって選ばされているという効果をねらったもの。そんな心理戦でより効果を高めるために、あえて見えないサブリミナルな要素をプラスするよりは、話題になる仕掛けを展開した方がはるかに効果的だし褒められます。
20年ほど前に出版された「メディア・セックス」(ウィルソン・ブライアン・キイ著)という本には、アメリカの作為広告が紹介されていました。どれもチープな広告で、ほとんどはこじつけっぽくもありましたが。
たとえばモデルの指が6本になっていたり、背景などに「SEX」という文字が隠されていたり...。
イメージに隠された違和感。その違和感が、なぜか気になる、目が行ってしまうという深層心理。
馬鹿げているように思いますが、日本は問題を避けることにパワーを使う国なので、漫画やモデル写真でも、ある角度の手は指が4本に見えてしまうからNGとか、なにかしらタブーを連想してしまう表現はNGになったりします。広告にわざわざ企業のマイナスイメージを植え付けるリスクを施すのは、自分の首をしめることでもありますから。

サブリミナルという姑息な手段を使わずとも、力強い表現や調和のとれた表現には、人を惹きつけるものがあると信じています。
ただ、Webデザインの視線誘導は、ユーザービリティ、インフォメーションデザインという括りの中で考えます。逆説的な言い方になりますが、広告なりWebなり「見てもらえないものと思って作れ」という心構えが前提にあるのです。
じゃあどうすれば目に入るのか。とにかくユーザー視点になって考える、ということでしょうか。

written by TZK:アイデアビューロー・Webチームのアートディレクター。

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