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池上彰×津田大介〜情報で世界は変わるのか?

2012年3月10日 レビュー

ニコファーレ・ロビーのディスプレイ六本木ニコファーレで行われた「池上彰×津田大介〜情報で世界は変わるのか?」を、会場で見てきました。4面の壁全部がLEDパネルの収録スタジオではなく、ロビーでのパブリックビューイングで、ですけど(笑)

←これがドリンクバーの上に設置された大型ディスプレイ。

SNSだけがきっかけでなかったアラブの春

「情報」をインターネット上で行き交う情報と狭義で語った時、実際の世界を変えるまでのパワーとなった「アラブの春」「NYウォール街デモ(Occupy Wall Street)」そして3.11直後の様々な支援活動あたりが、今回のお題目のきっかけとなったことは、一目瞭然ですね。
まず池上氏が語ったことは、Facebookが革命をもたらしたというヘッドラインで報道された「アラブの春」について、実際はSNSの呼びかけだけで群集が集まったワケでないということ。人口に占めるインターネット・ユーザーが日本に比べたらずっと少ない環境で、独裁政権に拳をあげたSNSユーザーが集まった様子を、TV局アルジャジーラが報道し、それを観た一般市民が「来週もこの場所で」の声に反応して集まっていったと。
着火さえあれば花火が打ち上がるほど自由への渇望が国民全体にあったからこそ、一部のSNSユーザーの動きが、マスメディアによって拡散され、群集となって革命に発展できたと。この動きが連鎖すると思われたイラン、中国で運動が成功しなかったのは、ネットだけでマスメディアの後押しがなかったから、という非常に分かりやすい説明。

ネットの情報をリアル世界とリンクさせるには

インターネット、とくにTwitterによる情報拡散が、すごい威力を持っていることは実感しています。Facebookではまだ、リアルに知っている人のつながり以上に、加速・増大された情報を得た実感はないのですが。
これまでも業務で、Webとリアルな世界との接点を模索してきましたが、SNSとリアルな世界は、確かにかなり近いポジションにあるなとは思います。

対談では、情報を伝えようとするモチベーション、情報を得てアクションを起こす切羽詰まった状況を自ら持っていることが、リアルな世界を変える必須条件では、というまとめに。

池上氏の人間力に惹かれました

池上氏も津田氏も、自分の意見を前に押し出すより、状況を整理し分かりやすく伝える道筋をつける人ですから、会話が平行線でかみ合ってない部分がないというのがまず「さすが」でした。当たり前のようですが、頭のキレる人同士の会話だと、あるじゃないですか、独演会を2人でやってるような状況(笑)
僕が観ていたのは、ロビーにある大型ディスプレイに映し出された、壁のすぐ向こうでやってる様子でしたが、際立ってたのが池上氏の人間力。語っているだけで、その時間内が「トークショー」となる惹きつける力。
「こどもニュース」で養われたと語っていた、アウトプットを考えてからインプットをしていった方が効率がいいというテクニックは、説得力ありました。

信頼できる人をフォローしているかどうか

情報の信憑性についても触れていました。個々のネットユーザーが自らのネット・リテラシーを高めるべきという会場の方からの意見がありました。現実的には津田氏のようなニュースソースとして信頼できる人を、フォローしているかどうかだろうなと思いました。
池上氏がNHKに入った当時たたき込まれたという、徹底的に事実確認の裏がとれた情報だけ伝えるということ、事実だけを伝え個人の意見をそこに挟まないということ。
そういう報道のプロとしての心得がある人の情報に、どうしても信頼度を寄せてしまいますね。

ということから、「人」なんだなと。「誰が」なんだなと。

高齢者にどうネットを伝えたらいい?

さきほどのアウトプットの方法について、ネットをよく知らない親に「ニコニコ生放送」ってなんだい?と聞かれて、きちんと答えられるか?という投げかけがありました。親がちゃんとイメージできるくらいきちんと。きちんと説明できないのなら、それはインプットが足りないことだ、と池上氏は言い切っておりました。

その件が妙にひっかかりまして。
実際、ネットをよく知らない高齢の方に、ちゃんと納得してもらえるような説明って超むずかしいです。
ネットの住人側にとっては、社会との接点が希薄になる高齢者こそネットを使って世の中とつながるべきと言ってるじゃないですか。iPadが出て、「これなら親も使えるかも!」と買ってあげた人を何人も知っています。
でも現実的には、身近な「人」が知りたいことを伝えてあげるべきなんでしょう。そして、できることを、ちゃんとじっくり教えておけるべきなんでしょう。

人の話が人を変える。それを忘れちゃいけない。

情報で世界が変えられるかどうかといえば、ある程度の時間をかければ変わっていくだろうとは思っています。でも今日の池上氏の話(=情報)を聞いて、僕は影響を受けたし、なにかが満たされるという部分で少し変わったと思っています。人の話によって人が変わる。これはインターネット以前から行われてきたこと。
それをアナログなこと、と過去の習慣にせず、人間の基本OSとして、時代の変化とともにアップデートさせていかなきゃいけないのだなと、思った次第です。

 


written by TZK:アイデアビューロー・Webチームのアートディレクター。

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