Blog

ストレンジャー・ザン・パラダイス

2008年3月26日 レビュー

アートとしてモノクロ写真にはじめて興味を持つようになったのは、大学時代に観たジム・ジャームッシュの映画「ストレンジャー・ザン・パラダイス」がきっかけでした。

それまでモノクロ写真といえば、古い写真かそれをイメージさせるもの、もしくは、報道写真のようなものだと勝手に決めつけていたんです。
そんな先入観を悔い改めさせてくれた「ストレンジャー・ザン・パラダイス」は、ストーリーはなんてことないのに、スタイルという点であらゆるものがカッコいい作品なのでした。
特徴的なスタイルは、動くモノクロ写真を連続してみていくような感じの映像です。
ムービーではあるのだけど、固定カメラのカットとカットの間に挟まれる短い黒い画面がシャッターの役目となって、ほんとモノクロ写真をみているような印象なんです。
そのスタイルにだけ個性を負わせているだけでなく、かなり計算された画面構図の中で展開される、人物の動きや会話が、とにかくゆるいのがいい! 人物のファッション、BGM、やってることがオフビート感覚で、「絵」としてキマりまくってるんです。

デジカメの時代になって、写真を撮るという行為のダイナミック・レンジが広がったと思っています。表現として突き詰めてもいいし、カジュアルに自分の目にしたものの外部記憶として使ってもいい。
フィルムを現像するタイムロスがないし、気軽に何枚でも撮れる。
たまたま撮れたすごく自然な姿をモノクロに変換して、数秒の黒い画面を挟みながらムービーにしていったら、あなただけの「ストレンジャー・ザン・パラダイス」ができあがるかも。
被写体を見るためでなく、撮影者の意識を共有するような写真は、それだけでコミュニケーションツールになってると思います。

そういえば、さっき何気にオフビートという言葉を使いましたが、この作品の根底に流れているスピリットが、「ビートニク」と呼ばれる50年代のカウンターカルチャー。
そのカルチャーに影響されたミュージシャンは数知れません。
ボブ・ディラン、トム・ウェイツ、ブルース・スプリングスティーン...
日本では佐野元春が有名です。

40オーバーの年齢ともなると、音楽やファッションなど、今はこれがイケてる!といわれているモノが、過去に流行ったものの焼き直しに感じることが多々あります。
オリジナルなものに対面するより、過去にあったものに少しアレンジを加える方が、受け入れやすいし、勇気や覚悟を必要としません。
「ストレンジャー・ザン・パラダイス」は、ビートニク・カルチャーを甦らせたものでしたが、今度は「ストレンジャー・ザン・パラダイス」そのものが基点となって、新たなカルチャーが生まれていった感覚があります。そうやって、時代のキーフレームになるような作品を残せたらなぁって思うことがあります。

 

@映画「ストレンジャー・ザン・パラダイス」のことを、当時映画好きさんの間では「ザンパラ」と縮めて言っていました。「ザンパラ」で話が通じる人がいると、やたら嬉しいです。

written by TZK:アイデアビューロー・Webチームのアートディレクター。

コメント

コメントを書く

コメントをどうぞ

トラックバック(0)

トラックバックURL http://www.ariz.jp/blog/ariz_tb.cgi/222